最近流行りのIT業界。
コロナ禍で経済的なダメージが多く出てる中、DX化やテレワーク普及によってコロナ前よりも売り上げが伸びていて、IT業界は注目の的となっています。
ITはWeb系や開発系などいくつかに分かれますが、その中でも特に大盛況なのがインフラ。
離れた場所でも業務を可能とするネットワークとセキュリティ、会社にサーバやデスクトップPCといった物理的環境を不要とするクラウドなどなど、まさに今の世に求められている技術を専門とする領域です。
コロナ禍においても安定して、むしろ大きく売り上げを伸ばしていて、転職希望者も多いと思います。
しかし、いざグーグルで調べると、次のような検索候補が出てくるのもまた事実。

ネットワークエンジニアで特にきついとされる理由が監視・運用の深夜業務です。
要件定義や設計などの上流工程に上がるほど裁量権が増え、高収入&楽しいと一般に言われてます。私もこの言葉に釣られて、設計志望でNW業界に入りました。
ここでは現役ネットワークエンジニアの筆者が、そんなネットワークエンジニアの、特に設計の業務についてお話していきます。
仕事の内容(設計面)
商流によって大きく裁量権が変わるのもIT業界の特徴ですので、最初に私の商流的な立ち位置をお話しておきます。
提供したネットワークを利用するエンドユーザーは、資本金1000億規模の会社を筆頭とするグループです。
そこのグループ会社にシステムやNWを一手に引き受ける会社がいて、そこからの依頼を受ける位置に私たちの会社がいます。
言い換えるとエンドがグループ全体、プライムがグループ会社、その下に私たちですね。
巨大なグループが相手ですので、すでに大きなネットワークが作られており、そこにプライムから降りてきた要件にあわせて手を加えていくことが主な仕事です。
今までやったことを言うとこんな感じ。
- 無線LANを導入
- SD-WAN導入&外部向け通信をLBO
- WANルータをアクティブ/アクティブに切り替えTV会議通信を片寄せ
ほかにも細々とやったことはありますが、大きなPRJとしてはこんな感じです。
私のチームは拠点の担当ですが、この裏でデータセンター側のチームが待ち受け環境を作ったり、ファイアウォールの穴あけをしてたりします。
NWエンジニアの仕事を経験したことがない人が見ると、「無線LANを導入が大きなPRJ?wifiルータとかアクセスポイント(AP)を設置するだけでしょ?」と思われるかもしれません。
会社に無線を導入する場合は家庭とは違って、ただwifiルータを設置するだけではダメなんです。
通信がいっぱいにならないように有線接続の通信とは分けたり、無線利用者が社員かゲストかにあわせて通信先を変えたり等、通信の設計をしないといけません。
設計項目はそれだけではありません。
- オフィスをカバーするためにどうAPを設置するか
- APに電源をどう供給するか
- APからWLCへの通信はどうするか
- 新しく設置したNW機器の認証はどうするか
- 無線端末の認証はどうするか
- IPアドレスをどう割り当てるか
- etc…
一例を取り上げましたが、拠点間通信はどうするかなどなど、まだいくらでも設計項目はあります。
ほかのPRJも同様で、ただルータやスイッチの設定を考えるだけが設計ではなく、様々なことを考慮して検討していかなければなりません。
巨大グループの複雑怪奇なネットワークが相手ですので、親会社のオフィスなのになぜか子会社のネットワークがぶらさがっていたり、しかも大昔に作られたネットワークで、設計を知っている人が誰もいないなんてこともあります。
ネットワークはどんどん継ぎ足しで形を変えていくので、全容を把握するのは非常に難しいです。
上記のように設計を知っている人がいなくて、資料もほとんど残ってないようなものは、私の現場では「闇」といってみんな避けていきます。
しかし際限なく複雑になっていくと運用できなくなりますので、いつかはシンプルな形に直す大規模な更改PRJが組まれることになります。
ここで、「闇」に立ち向かい、謎を解きほぐせるかどうかが上流工程にいるネットワークエンジニアの一番の力の見せ所だと思ってます。

config作って流し込むだけならぶっちゃけだれでもできます。
仕事の内容(調整面)
楽しい設計のお仕事は、実は業務時間の1/5くらいです。
残りは何かというと、設計内容を無心で資料に落とし込み、configに変換していく作業と、各種調整の時間です。
資料作成はここでは細かくは触れませんが、設計書・セグメント一覧・構成図・パラメータシート・機器管理台帳などです。
エクセルマクロに強いと、ここで楽ができます。私はパワーポイントをマクロでイジる方法を調べて、構成図を一発で作れるようにしたりしてます。
パラメータシートもセグメント表やホスト名表を参照してほとんどの情報を自動で埋められるようにして作ってる上に、そのパラメータシートを参照してconfigも自動生成してます。マクロ万歳。
pythonあたりで画像認識ツールを作る技術があれば、手書きの構成図さえあれば後はすべて自動作成するなんてことも可能かもしれませんね。
というわけで資料の作成は効率化の余地がありますが、どうあがいても自動化できない地獄の業務、それが調整です。
調整といっても説明が難しいのですが、簡単にリストアップします。
- 役割分担決め
- MTG開催調整
- お客さんや運用部隊への資料請求
- 基本設計のお客さんの合意取り
- 機器手配
- 運輸手配
- 検証環境手配
- CE手配
- ビル入館調整
- 立会者調整
- キャリア調整
- 作業日調整
- etc…
設計項目と同じく、こちらもまだまだいくらでも調整項目はあります。
この調整が非常に大変で、思い通りにはなかなかいきません。
お客さんの急な要件に対してどうしても機器の納期が間に合わなかったり、キャリアが予定通りに回線開通できると言ってたのに作業2日前に急に無理だったといってきたり。
お客さんの立ち合い者に鍵を持ってきてもらう調整を忘れてCEがマシンルームに入れなかったり、まだ業務中だと現地のお客さんに怒られたり。
社内のどのチームも「それはうちの仕事じゃない」と断ってやるべきことが宙に浮いたり、既に存在しない設計者を探し求めて「闇」だと気づくまでひたすら連絡をまわしたり。
エンジニアはコミュニケーション力が必要とよく言われますが、その理由の1つがこの調整業務です。
人脈を広げ、困ったときに相談できる人や調整時に味方になってくれる人を作っていかないと、何も物事を進められなくなります。

キャリアや運送業者のミスでめちゃくちゃ責められることも日常茶飯事です。
仕事の内容(運用面)
設計の仕事は設計したら終わりではありません。
構築作業時に想定通りの動作をするか立ち会って確認し、何か問題があればエスカレを受けることになります。
ちなみに構築作業は夜間か休日が多いので、設計でもやっぱり深夜・休日就業はしないといけません。
お客さんが稼働始めても問題ないことを確認する翌営業日の待機もありますので、場合によってはシフト制の監視部隊よりキツイかもしれませんね。

構築完了後は運用部隊に資料の移管と説明をし、問題なく運用できるよう教育しないといけません。
運用スタート後も運用部隊で手に負えないことがあればエスカレがきます。
お客さんとのMTG中であろうと、休日にゲーム中であろうと、容赦なくきます。
その場で答えられることであれば良いのですが、先述の通りNWはどんどん増築して姿を変えていきますので、自分の知らない領域での変更が影響して起きた障害について聞かれることも。
自分だけで終わらせられない場合は地獄の調整業務が始まりますし、「闇」の領域であれば本番環境に入って問題の箇所を読み解いていかないといけません。
結局設計ってキツイの?
設計という言葉だけを見て、一般でイメージされるITエンジニアのように、キーボードをカタカタ、ッターン!ってやってるイメージで始めるとキツイと思います。
仕事の大半の時間は人と向き合う時間で、設計の時間は少ししかないです。まして機器に触りたければ、構築や監視のほうが絶対に多く触れると思います。
結構私の周りでも、設計から構築に戻りたいという人は多いですね。
思い通りのNWを作れると言えば聞こえはいいですが、結局はお客さんの要件に合わせてなので、あまり無茶はできません。
私のところのお客さんはSD-WANルータを入れたりDNAセンターを入れたりと最新のモノへの関心が強いので、最新の技術に触れる良い環境なんですが、最新のモノって前例がないですし、結局リスク回避のためにCiscoにある程度設計を頼むことになるんですよね。
ネットワークは今後SD-WANルータなどを筆頭とするSDN(ソフトウェア管理のネットワーク)に移行していくと思います。
また、今までの拠点-データセンター-インターネットという境界型NWの形が崩れ、どこにいても会社の環境に入って業務ができるゼロトラスト型のNWに移行していくことでしょう。
設計を今後やっていきたいのであれば、これらの言葉にワクワクし、すぐさま調べ始めるような人でないと厳しいと思います。
まあぶっちゃけググったくらいじゃよくわからなくて、結局Ciscoに聞くんですけど。
最新の技術に常に興味を持ち、手順書のない未知の領域を確かな調整力を持って突き進む。そして謎だらけの既存環境を読み解きシンプルな形へ落とし込める。
そんなNWエンジニアに憧れる方はぜひ設計を目指しましょう。